大河内小学校の遠足

先日,地元・大河内小学校の遠足が行われました.

例年は7月に一泊二日の日程で受け入れているのですが,今年度はコロナウイルス流行のために宿泊がなくなり,さらに悪天候の影響などもあって延期を重ね,ようやく3月のこの時期に実現したのでした.

全校児童12名で出発式
今年は低学年生が多く(1~3年が10名)
なぜか男子が多い(10名)

天気が心配されていましたが,前の晩から降り出した雨も明け方に止み,空が明るくなっていました.今の時期は濡れると冷えてしまいますからね.本当に良かったです.

ぬかるんで滑りやすい箇所もありましたが
子供たちは(あまり)動じずに淡々と歩きます
体が軽いと滑りにくい?

大河内小の遠足は毎年のことでもあり,今年は何を見せよう,どんな話をしようかと,やっぱり色々と考えます(子供相手だとあまり事前に考えても意味がなかったりしますが).

今回は大まかに「シカが森に与える影響」をテーマにしました.

シカ柵の中ではたくさんの若木が育っていることを確認
(葉がついていないのでわかりにくいですが)

シカが下層植生を全部食べてしまったことで
土壌が流れて木の根が露出した様子

「地面に雨粒が落ちた時に飛び散る土の量」を調べる実験
研究の話も熱心に聞いてくれました

もう一つのテーマは「川が生まれる場所を見てみよう」です.
小学校の前を流れる一ツ瀬川は,やがて宮崎市北部から海に入る,なかなか大きな川ですが,その源流部は概ね宮崎演習林の山林に含まれます.

森の地面に降った雨は,凹地(谷)に集まり
より低い場所に向けて流れていきます

そんなことより何か生き物はいないかと夢中な皆さん
夏だったらカエルくらいいたかもね

この一年間,小学校では中止になった行事も多く,それ以外にも様々な面で不自由があったことと思います.今回の遠足は,少しそんな気持ちが晴れるような楽しいものになれば良いと思っていましたが,どうだったでしょうね.

次は半年後くらいでしょうか.また一緒に歩きましょう.

2021.3.11 市橋

守りきれなかった植林地

 前回の記事でご紹介したように,宮崎演習林の植林地ではニホンジカ等が木を食べたり傷付けたりするため獣から苗木を守る設備が無い限り若い樹々が育たない状況が続いています.このため,毎年新しく苗木を植え付ける区画は合成繊維や金属で出来た網「獣害防除ネット」を必ず設置します.若い植林地には青々とした草や若い苗木の新芽など獣にとって大切な餌が豊富にあります.演習林内の大半の場所でめぼしい植物は食べ尽くされているため,ニホンジカにとって植林地の獣害防除ネットの中は何としてでも侵入したい魅力的な場所なのです.

ネットの中は草が生い茂るが,ネット外は食害を受けて芝生のよう.6月下旬.

  獣害防除ネットは設置した当初は万全でも,やがて強風でネットに歪みや緩みが生じたり土壌の侵食で裾が浮いたりします.こうなると獣たちはネットを潜り抜けたり飛び越えて侵入してしまいます.そこで,獣害防除ネットを定期的に点検して緩みや歪みを解消し支柱や控え綱で補強をするなどのメンテナンスが必要です.宮崎演習林では定期的に職員が獣害防除ネットのメンテナンスを行っています.

 
沢沿いの段差に設置した網が弱点となり,倒された獣害防除ネット.

 

 
網の裾を止めるアンカー.土が柔らかいとアンカーが浮いて獣が潜り抜ける.

 定期的なメンテナンスにより適切に植林地が守られれば,苗木は順調に成長し数年程度でニホンジカが加害し難い程度のサイズに育ちます.しかし,地形が複雑でネットに弱点が生じやすい場所,奥地で職員が訪れる頻度の少ない地区では獣たちが侵入に成功してしまうこともあります.スギやヒノキなど針葉樹の苗木は芽を獣に食べられると,側の新芽が伸びて代わりの幹になろうとします.しかし,繰り返し齧られることでどんどん枝が増えて盆栽のような萎縮した樹形になります.かろうじて伸びきっても幾本もの幹(叉)に分かれてしまい林業的には全く無価値の代物に成り下がってしまうのです.このように予定していた植林が環境要因や野生鳥獣の攻撃などにより成立しなかった場所は「不成績造林地」(写真)と呼ばれます.それまで投入したコストが無駄になった場所ということで,とてもやるせない気持ちになります.

2010年にスギを植林した場所.疎らにいじけたスギ苗が見える.

繰り返し食害を受けたスギ苗.10年生で50cm程度.

 写真の場所は一部は展示用に保存し,それ以外は苗木を植えなおす「改植」や広葉樹林への誘導など,不成績造林地を使った試験研究が検討されています.

 

2021.3.5 Tn

シカとの戦い

   近年日本中で問題になっているシカ問題ですが,ここ宮崎演習林も例外ではありません。道端で見かけるには可愛いかもしれませんが,一度山に入ると大事に植えた苗木を食いあさったり,自然に生えてきた木を端から食べたりと,山を管理していく上ではかなり厄介な存在です。とはいえ手をこまねいていても何もならない…と言うわけでここ20年以上試行錯誤しているところです。

同じ場所で撮った写真(上:1990年・下:2005年)  郵便歩道
  
   よく利用するのは獣害防除ネット。魚とりで使うトアミのようなものですが,紐の中にステンレスの針金が編み込まれていて,食いちぎられにくくなっています。編目のサイズも色々あって,演習林で使っているのは主に15cm目,10cm目,5cm目です。昔は15cm目を使っていたのですが,これは網目が大きすぎシカが頭を突っ込んで絡まってしまうことも…。10cm目なら頭は突っ込みにくいのですが,この大きさではウサギが侵入してしまいます。シカは防げてもウサギは防げない…ということで,最近は5cm目を使用しています。山の中で1巻50mあるネットを何巻も設置するのは大変な作業ですが,ネットなしで苗木が育つことはまず無理な状況です。
 
防除ネット
 
   比較的設置が簡単で手軽な電気柵も利用します。等間隔に支柱を立ててそこに電気の流れる線を張り巡らします。つなぎ合わせた線に機械をつないで電気を流しているので,触れるとビリッとするのです。電気風呂のようなビリット感ですが,自然界にはあまりない感じなので動物は嫌がります。

電気柵
 
   上の2種類の柵は設置の際に融通がきき,変化に富んだ地形でもそれに併せて設置することが出来ます。ただネットは穴が開いたり地際が浮いてしまったら,そこからすかさずシカが侵入します。電気柵はソーラーパネルで動く機械の具合が悪くなれば電気が流れなくなり,電気紐はただの紐になってしまいます。また周囲の草が伸びてきて電気線に触れてしまうと,漏電して電気が弱くなり,痛くもかゆくもないビリット感になります。完璧に侵入を防止することは難しいですが,定期的な見回りを行うことで,侵入を防ぐ努力をしています。
   こんな中,先日天然林内に新たな柵を試しました。使ったのはワイヤーメッシュという金属製の網です。2m四方の網を支柱でつなぎ合わせます。ネットと違って緩んだり裾が浮いたりしません。下から潜りにくくもあります。ただ設置前に重い資材を運ぶという大変な仕事がありました。しかし運搬半日と設置1日弱で,10m✕24mの枠をどうにか設置出来ました。今後このワイヤーメッシュ内がどうなっていくか,ワイヤーメッシュの効果も併せてご期待ください。

ワイヤーメッシュ柵
 
   獣害防除ネットや電気柵に比べ,ワイヤーメッシュはしっかりしていてシカの侵入防止には効果的ではないかと考えています。しかし正直,事業規模での設置は現実的ではありません。植栽木の保護や天然林の更新については,まだまだ考えていかなければなりません。
   これからも長く果てないシカとの戦いは続きます。
 
2021.2.5 sa

椎葉村では、冬に雪が降ります。


少々遅いですが、新年あけましておめでとうございます。

一日も早く新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着き、良い一年になることを祈っております。

ところで、1月初旬、宮崎県椎葉村でも積雪がありました。かなりの積雪で、目視で20cmはあったと思います。

今日は、その様子をご紹介します。


我々、九大宮崎演習林の愛車、プラドで出陣です。毎年、12月頃になると、冬タイヤに履き替えているので、こんな日でも安心です。運転も、同僚のIさんがしてくれるので大安心です。

その一方で、自分の車で球磨郡(多良木町)から職場に峠を越えて上がってくるのは、とても心配でした、、、(異動してまだ1年足らずなため、雪道や凍結した道の運転経験がほとんどありません)。




下車して、山道を歩きます。今日は長靴を履いてくるべきだったと後悔しました、、、。こんな雪深い宮崎演習林を初めてみました。
感動です。




御神の滝です。前回の山内(耕)さんの報告よりも氷結が進んでいます。分厚い氷は、まるで氷河のような美しい青色をしていました。



まるで北海道のような景色です。それもそのはず、こちらはカラマツ林で、かつて北海道から移植した苗木でできた人工林です。どうも気候があわないようで、最近、元気がなかったり、バッタバッタと倒れている木をよく見かけます。



こちらは、宮崎演習林の代表樹種、アカマツとアセビです。雪をかぶるアカマツとアセビ、なかなか新鮮です(ちなみに、私は徳島生まれの神奈川育ちです。最近まで、台湾で生活していました。雪とはあまり縁のない生活をしていました。)




美しい雪景色をながめ、そろそろ事務所に戻ります。
すっかり体が冷えました。


2021.01.25  TK

凍てつく寒さ

 宮崎演習林HPの先月のトップ画像にも上がりましたが、今年は冷え込みが激しく、演習林近辺の各地で氷瀑が発生し始めています。私の出身は静岡ですが、南九州には静岡と同程度に暖かいイメージを抱いていたので、今年の寒さには驚くばかりです。

もう1息で完全に氷瀑でした。惜しい...



 
職員が乗っても割れる気配はありませんでした。そこそこ厚い氷が張ってそうですね。
 
つい最近も、住んでいる職員宿舎のお風呂の給湯器が凍結したり、村民が使用している簡易水道の管が凍結したりとてんやわんやでした。
 
もうあと2、3か月もすればやってくるであろう暖かい春を待ち望んで、この凍てつく寒さを耐え忍んでいきましょう...

                             山内(耕)


ヤマメシ


 上の写真は曲げわっぱ、またはメンパとも呼ばれる曲げ細工で、かつて弁当箱に使われていたものです。(宮崎演習林所蔵)

曲げわっぱの弁当箱については、杣人(そまびと:林業従事者の古い呼び名)が愛用していたことでも知られています。彼らの昼ごはんは弁当箱のフタにもご飯をぎっしり詰めたもので、一食あたり2~3合ものコメを平らげたそうです。

昔の山林労働がいかに重労働であったかを物語る逸話ですね。

私たち演習林技術職員の仕事は、森林での作業や調査と多岐にわたります。
昔の山林労働と比ぶべくもないですが、深く険しい山中での仕事では消耗を強いられます。
そんな山での一番の楽しみといえばやっぱりお弁当の時間です。
一仕事終えて、みんな思い思いにお弁当を広げてくつろぎます。
気候のよい時期に山で食べるお弁当はことのほか美味しく感じます。
これは私が愛用しているナラ材の弁当箱で、20年以上現役の丈夫なものです。
本来は2段重ねで使いますが、年相応に今では1段が適量です。
こちらは最近使いだした曲げわっぱの弁当箱。
たまに弁当箱を変えたら気分も変わるのでは、と妻が気遣って新調してくれました。コンパクトながら安定したスタイルで気に入っています。

同僚たちのお弁当も紹介したかったのですが、あっさり断られました。

山間僻地での不自由な生活は、これまでの通信からうかがい知れると思います。
なにせ週に一回しか!食料の買い出しにいけないのですから。
そんな場所にあっても私は妻のおかげでお弁当のみならず三食の心配なく暮らしています。(とはいえ妻はいつも食糧計画に頭を悩ませていますが・・・)
一方、ここに住む後輩たちは、コンビニ弁当というわけにもいかず、毎日三食のご飯を自分で賄わねばなりません。
そのことを思うと、普段は先輩風を吹かしている私ですが、たまには彼らに優しくせねばと思ったりもします。

さて、今日も手作りのお弁当を携えて、サラメシならぬヤマメシを励みに山へ出発します。妻への感謝と元気に帰ってくることを胸に秘めつつ。
「行ってきます!」
                  2020.12.1 D.O


三方岳調査

 最近、よく三方岳に登っています。三方岳は宮崎演習林にある標高1439mの山です。車を置く場所が1050mくらいなので、およそ400mを登ります。時間にして1時間半。山頂付近の稜線に調査に行くためです。

登り始めの森はミズナラを主とする二次林です。

しかし、登り始めるとすぐにブナが迎えてくれます。ミズナラ、モミツガもたくさんいます。始めの方は常緑広葉樹のアカガシやウラジロガシもいますが、そのうち姿が見えなくなってきます。彼らにとっては寒すぎるのでしょう。そのかわり、ブナをよく見るようになり、サイズも大きくなってきます。さらに上るとブナの樹高が低くなり、どっしりとした姿になります。とても風格があります。



尾根には、シカが食べないアセビが大きく育っています。技術スタッフが登山道の整備をしてくれているので、そのような場所でもアセビトンネルをくぐり抜けて通ることができました。



登るにつれて、見える景色もどんどんきれいになります。この日は秋晴れで、とてもきれいに遠くの山まで見えました。市房山と津野岳の間に雲海も見えました。


山頂付近の稜線では、樹木密度がとても低くなっています。土壌侵食が激しく起こっていて、樹木の粗根が土壌から出てしまっています。


枯死している個体も目立ちます。土壌侵食が原因なのでしょうか、、、??



朝8時半に事務所を出発して、11時頃からやっと調査を開始できました。この日はリタートラップの回収やイングロースコアの設置を行いました。福岡から3人の3年生も手伝いにきてくれました。予定していた14時半には終わりませんでしたが、15時半頃、総力を尽くして調査を終えることができました!




三方岳の頂上付近は冬には土壌が凍結・融解を繰り返し、土壌侵食を加速していると考えられます。一般的には森林では起こらないとされるリル侵食も観察されます。もし、土壌侵食が原因で樹木衰退が起こっているのであれば、樹木個体数がどんどん減って、さらに土壌侵食を加速させる負のフィードバックがかかっている可能性もあります。これから数年かけて、椎葉の森の土壌侵食と樹木衰退について調べていきたいと思っています。

Katayama