境界を歩く2

本年度最後となる境界確認に同行しました.今回の目的地は樋口山(ひのくち,とここでは呼ばれます)の周辺.

宮崎演習林の南東部の縁,おそらく最もアクセスの悪い区域であり,調査地や学生実習の場として利用されることはまずありません.職員も足を踏み入れることが少なく,それはそれで貴重な場所と言えるかもしれません.


朝は(比較的)早めに出発.まずは頂上を目指します.
途中で霧が出てきました
急傾斜の登りが続き,私は早い段階で心がくじけましたが,技術職員の皆は粛々と?仕事をしていきます.
境界石の確認
この石をこんな所まで運んだ昔の人に思いを馳せつつ

尾根筋には,よく見るアセビの低木林が広がっていました.今は花盛りです.
株によって花の色が違う
アセビのトンネルを抜けて
樋口山頂(1434.6 m)に到着
特に見どころのない山頂でした(霧のせいかも)

山頂から先は基本的に下りになります.ホッとしたのも束の間,この先がまた長かったのでした.

山中の境界は,尾根や谷など自然の地形に沿って引かれるのかと何となく思ってましたが,この区域ではそのような気配はありません.谷に下りてはまた尾根まで上るようなことを繰り返し,じわじわと進みます.
左の急斜面を下りてきて石を発見
谷を横切る方向に境界線がありました
しばしば境界石が見つからず,地図を確認
あの沢まで下ります...
休憩中にコケを眺めて心を慰める
ひょろっと伸びた先の器官(蒴)で次世代の胞子が作られ,外に飛んでいきます

細く深く,岩を削る流れ
現場では流しそうめんの話をしてました


最後に大岩をくぐって終了
長い道のりでした.境界とは何だろうと色々考えさせられました.まあ歩けば歩いただけ,面白いこともあるのですけどね.


前記事で菱さんが挨拶されてましたが,年度末に教職員数名の入替りがあります.この日が現メンバーとしては最後の山歩きの機会でもありました.そのことに対し何か感傷を覚えるだけの心身の余裕がなかったのは良かったのか悪かったのか(まあまたどこかで一緒になるのです).

ともあれ新学期には新たなメンバーを迎え,新たな気持ちで宮崎演習林を盛り上げていければと考えております.

2020.3.31 市橋

おせわになりました

宮崎演習林での5年9ヶ月の勤務を終え、4月から福岡演習林に異動します。

赴任してすぐに思ったのは、宮崎演習林が標高の範囲が広く、雨量が3000mmを超えるため、自然撹乱が多い上、古くから文化的に奥山まで人間による森林利用の盛んだった、とても複雑な森で、どういうところにどんな森林が成立しているのかとてもわかりにくかったということです。

それで私はまず、どこになにがあるのか把握するための観測として、3000ha弱ある演習林全域を対象にした植生調査をはじめました。


教員、技術職員で宮崎演習林をくまなく調べようと毎年少しずつ植生、土壌を調べました。いろいろなところを実際に歩けてよかったです!


中でも一番おもしろかったのは、丸十裏の植生で、わずか10m四方の中に、ブナ、ミズナラ、モミ、ツガ、アカガシなど、落葉、常緑の代表樹種を含む針広混交林の代表樹種に加え、ヤマグルマ、ヒサカキ、リョウブ、アオダモ、コハウチワカエデなど、様々な形質の樹木が一箇所に集中している場所を見つけたときでした。
まさに椎葉の多様性の縮図を象徴する林分でした。
みなさまもお暇があればぜひいってもらいたいです。
早く結果を公表できるように整備中です。

5年の間に沢山の国内外のお客さんを迎えました。


九大総長も椎葉の山と、特に人を気に入り、二回おいでになりました。

映画「しゃぼん玉」の撮影もありましたね。
宮崎演習林の景色だけでなく、内容もとてもいい映画なのでぜひ見てください。
http://www.shabondama.jp/
真ん中へんでしげじいと山仕事に行きますが、そのへんの場面はだいたい演習林です。
市原悦子さんの最後の映画作品になります。

シェフィールド大のハリーさんは椎葉のマグノリアを調べに来ました。
いろいろな分野のひととの出会いも演習林の醍醐味です!


心残りはもっと地域の課題になっている林業問題と環境や生物多様性をつなぐような研究がしてみたかったなというところです。





今後も宮崎演習林での教育研究が充実するよう、微力ながら協力していきたいです。
職員、利用者の方々、近隣の方々、大変お世話になりました。
ありがとうございました。

2020/3/27 菱

春模様

   宮崎演習林もここ数日の暖かさで花盛りとなってきました。例年に比べると桜もツツジも開花が早いです。下の写真はそんなよく見かける花ではなく,林床にひっそりと咲いていたジンチョウゲ科ジンチョウゲ属のオニシバリです。名前の由来は,「樹皮が強く鬼を縛っても切れない」とのことです。引っ張ってもなかなか切れない樹皮です。

オニシバリ(16林班)
   暖かいとは言え日陰ではまだツララが成長していたり,明け方には氷点下になったり,春全開となるにはまだもう少し時間がかかりそうです。

北斜面のツララ(22林班)
2020.3.27 sa