遅くなりましたが学生実習の報告です

  昨年の9月11日から15日の日程で「生態水文学実習・公開森林実習および森林生態水文学特論」を実施しました.

 森林生態系における環境と森林の水循環に関する実践的実習として計8名が参加されました.公開森林実習にはその内、2名の方が島根大学と京都大学から参加されました. 

天然林の見学

 

班別調査


 10月11日から14日の日程で「山地森林管理学・森林生産制御学特論 」を実施しました.台風第14号の影響により内容を変更せざるを得ませんでしたが、無事に終了しました.

 この実習は新型コロナウイルスの影響により2021年度に実施出来なかったため、学部4年生と大学院生が対象者でした.

 山地森林生態系の利用・保全・管理の理論的枠組みに関する実践的実習として計3名がされました.

ケヤキ人工林の見学

 

広葉樹造林地の見学


 なお、学部3年生を対象とした「山地森林管理学(当初の日程は9月26日から29日)」 は台風第14号の影響により、2月末に延期となりました.


 11月14日から18日の日程で「森林計画学実習 」を実施しました.

 宮崎演習林および椎葉村の森林を対象にした市町村森林計画のゾーニングに関する実践的実習として地球森林科学コース3年生6名が参加されました.

森林遷移の解説(三方岳登頂の途中) 


地拵等の造林地見学

 

 11月21日から23日の日程で「森林政策学実習 を実施しました.

 木材産業や山村振興策についての実習として地球森林科学コース3年生14名が参加されました.宮崎演習林に1泊しその後、熊本県球磨郡各町村・芦北町・八代市・水俣市に行かれました.

森林遷移の解説

 

台風14号による国道崩壊地の見学

 

 遅くなりましたが実習に参加された皆さまお疲れさまでした.

 またのご来演お待ちしております.

2023.01.27 kabe

見慣れないカシ

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。 

さて、生物を観察して形態的な特徴から種を特定することを「同定する」と言います。生物の形態を観察していると「この個体とあっちの個体は別の種かもしれないな」と感じることや、逆に今まで区別していた2種が実は同じ種だったということをしばしば体験します。こうした体験は、観察を続けることで同定する能力が向上したことに起因しています。流行りの深層学習などAI(人工知能)がやっていることは、このような人間の脳の働きを模倣した仕組みであると聞きました。


 先日、よく分からない常緑のカシ類を見つけました。その地区ではアカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシ、アラカシ、マテバシイなどブナ科樹木が生育していました。調査のため樹木の同定をしないといけないのですが、よく観察すると典型的な形態ではないアカガシが混在していることに気付きました。なんだかよく分かりませんが、このような直感は大体当たるので葉っぱを持ち帰って調べることにしました。アカガシの葉は縁が滑らかな全縁で葉柄が長く、古い樹皮はかさぶた状になるところが特徴です。しかし、持ち帰った標本は葉縁の上端に申し訳程度のギザギザ(鋸歯)が有ったり無かったりし、葉柄は明らかに短いのでした。樹皮もアカガシにしては白っぽくて平滑な様子でした。

不明のカシ類の外観

不明のカシ類その葉っぱ

 しばらく考えてツクバネガシなのではないかと思い至りましたが、どうも私が知っているツクバネガシよりも葉がずっと大きくて触感もゴワゴワしています。平凡社の植物図鑑で調べてみたところ、なんとアカガシとツクバネガシの雑種でオオツクバネガシという種であることが判りました。植物では近縁の2種で雑種ができることがあり、その形質はやはり親の形質を引き継いで中間的な特徴を示すことが多いです。なるほど、だから最初はアカガシと間違えていたのでした。

左からツクバネガシ、オオツクバネガシ、アカガシ
葉のサイズ、葉柄の長さが異なる


左からツクバネガシ、オオツクバネガシ、アカガシ
左2種は赤矢印の箇所に鋸歯(ギザギザ)がある


オオツクバネガシの樹皮
左は若い樹、右は壮齢の樹

アカガシの樹皮
かさぶた状に古い樹皮がはがれ、赤味帯びる


 その後、宮崎演習林の他の地区でもオオツクバネガシを見つけ、わりと雑種がありふれていることがわかりました。また、オオツクバネガシの葉っぱの大きさや鋸歯の有無などの形質にかなり幅があるように感じました。これは、偶然なのか、雑種の混ざり具合?が場所によって異なる所為なのでしょうか。ふとした気付きで想像が膨らみました。

堂々としたアカガシの樹形

2023/1/10 NT