ナラ枯れのあれこれ

 

突然ですが、「ナラ枯れ」という言葉をご存じでしょうか?カシノナガキクイムシという、樹木に穴を開ける虫が媒介する病原菌によって、シイやカシ、ナラ類が部分的、または全体的に枯死する病気のことです。以前2022年6月に福岡の演習林で話題が上がっていました(ナラ枯れと向き合う)。このナラ枯れは、2020年頃に宮崎演習林でも確認されており、現在調査中です。先日1/30、1/31に、福岡演習林でナラ枯れに対する意見交換会を行ってきましたので、少し紹介しようと思います。

まず福岡演習林では、被害を受けた木を伐倒して燻蒸処理や割材するといった、被害拡大の防除を行っていました。また、福岡演習林は都市近郊林ということもあって住宅地や公道に近い場所もあり、そういった場所にナラ枯れの被害木があると、倒木や落枝などの安全管理の点からも優先的に処理しているようでした。




左は板目面(繊維方向に平行に切断した面)、黒い点が虫があけた穴です。右は木口面(木の繊維方向に直角に切断した面)、黒い線のようなものは虫が通った跡です。
 

宮崎演習林は、山岳奥地というアクセスの悪さや、演習林の3割程度が傾斜30度以上の急峻な地形であることから、被害を受けた樹木のある場所に行き、伐倒や防除の処理を行うのが非常に困難な場所です。そこで、約3000haという広い面積の演習林内で、どのように被害が変化していくのかを、目視やドローンを使って調査しています。現段階では、宮崎演習林の南側から北側へ向かって被害が拡大進行している可能性があることや、樹種や樹木の太さによって被害の形態が変わることが分かってきました。被害への対策としては、被害跡地に新しく堅果の播種または苗木の植栽を行うための後継樹の確保・育成を行っています。

中央左上を中心とした枯れている樹木がナラ枯れ被害木です。

今回の意見交換で改めて認識したのは、同じナラ枯れと言っても、周囲の環境や状況によって何を主体に行動を起こすかが変わってくるということでした。あらかじめ事前準備や現状把握をした上で、目的や方法を設定することの重要さを学ぶことができました。

宮崎でも福岡でも、ナラ枯れへの対応はしばらくの間続きそうです。

                          2023.2.15 山内(耕)