2024年度学生実習のご報告

 8月19日から23日の日程で「森林科学入門『山岳森林コース』」を実施しました。

 この実習は九州大学の様々な学部に所属する学部生を対象にしており、今年は共創学部、文学部、経済部、工学部、芸術工学部、農学部から1年生から4年生が参加されました(1,2年生が多いです)。 また今年は早稲田大学から1名の参加があり、計16名の参加がありました。

 フィールド科学に関する実践的実習として、1日目は天然林見学、2日目は樹木学(樹種同定試験)・森林調査、3日目は森林散策・森林環境計測・研究計画立案、4日目は班別調査・データとりまとめ・プレゼン準備、5日目は成果発表(グループディスカッション)を行いました。

天然林見学(左:防獣ネットの内側.右:防獣ネットの外側【裸地】)


森林調査

班別調査


グループディスカッション



  9月3日から6日の日程で「生態水文学実習・公開森林実習および森林生態水文学特論」を実施しました。

 森林生態系における環境と森林の水循環に関する実践的実習として地球森林科学コース4年生 2名、森林生態水文学特論には7名、公開森林実習には1名の方が宇都宮大学から参加されました。台風10号の影響により調査箇所の変更等がありましたが、予定どおり実施できて安堵しました。

 

班別調査

 

グループディスカッション



 9月30日から10月3日の日程で「山地森林管理学および森林生産制御学特論」を実施しました。

  山地森林生態系の利用・保全・管理の理論的枠組みに関する実践的実習として地球森林科学コース3年生 24名、森林生産制御学特論には2名の方が参加されました。

 

樹木の識別試験

 

生長量調査


三方岳登山

市房杉の見学

 

 

 10月28日から30日の日程で「森林政策学実習」を実施しました。

 木材産業や山村振興策についての実習として地球森林科学コース3年生 19名が参加されました。宮崎演習林に1泊しその後、熊本県球磨郡各町村・人吉市・八代市に行かれました。

 

森林遷移の解説

 
岩谷小屋跡および人工林見学

原木市場および製材の見学

 

伐採現場の見学

 

 11月12日から15日の日程で「森林計画学実習」を実施しました。

 宮崎演習林および椎葉村の森林を対象にした市町村森林計画のゾーニングに関する実践的実習として地球森林科学コース3年生 12名が参加されました。

 

大河内八幡神社の見学

 
森林遷移の解説および天然林・造林地等の見学
 

河畔林の解説


グループディスカッション


 遅くなりましたが実習に参加された皆さまお疲れさまでした。

 またのご来演お待ちしております。

2024.12.20 kabe

冬の便り

 今年は夏の猛暑が長く続いたせいか,秋の紅葉シーズンが短く,例年になく彩りに欠けました。11月中旬から急に寒くなり,最低気温がマイナスの日が続き,演習林の木々も「あっと」という間に葉を落とし,すっかり冬支度を済ませています。

それでは初冬の様子をご紹介します。

2024.12.17 kubota 

 

葉を落とした落葉広葉樹

川底に溜まった大量の落葉

まだ小さな氷柱ですが,冬の厳しさが増すに連れて大きな氷柱に成長します


林内にうっすら雪が積もっています



市房山初冠雪

 

         市房山の頂が雪化粧を纏いました。

2024年度公開講座「椎葉の奥座敷 紅葉の大藪銅山散策と椎葉産業史」

今日から11月、宮崎演習林周辺もようやく秋めいてきました。

先日、椎葉村観光協会さんとの共催で、公開講座「椎葉の奥座敷 紅葉の大藪銅山散策と椎葉産業史」を実施しました。

今年は何だか微妙な天気予報でしたが、2日間とも雲はあれども雨に降られることはありませんでした。


1日目は、宮崎演習林事務所に集合した後、まずは講義室で座学でした。

演習林とはどんなところか簡単な説明を聴き、事務所周辺を含む椎葉村大河内地区での樹木の利用について学びました。

皆さま熱心に耳を傾けてくださってます

強度の高さから柱として利用される樹木や、加工のしやすさから天井板に利用される樹木、はたまた、その腐りやすさから棺桶として利用される樹木など、昔の人々は樹木の性質によってその用途を分けていたようです。

(参加者の皆さま、これらの樹木の名前、覚えているでしょうか?)

座学の後は、演習林事務所の資料館を見学し、外に出てガイドの方と一緒に大河内地区の歴史を学びながら事務所周辺を散策しました。

標本や模型を見学

大河内地区の庄屋跡地を見たり

大河内神社の境内で神楽についてお話を聴いたり

ヤマビルと闘いながらケヤキの巨木を観察したり

大河内地区の歴史を学ぶ上では欠かせない
旧椎葉徳蔵邸跡地を見学したり

昔の出来事に思いをはせながら、1日目は終了・解散しました。


2日目は、朝から、演習林内に残っている大藪銅山跡地を目指して森林散策でした。

各々しっかり準備運動をして、いざ、出発!

道中では、近年宮崎演習林でも広がりつつあるカシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害や、シカによる下層植生の食害が原因で引き起こされる土壌の流出について、じっくりお話しを聴きました。

カシノナガキクイムシが入ってこないように
ぐるぐる巻きにして保護しているミズナラ

土壌の流出によってできた土柱を観察

モミの巨木。その樹皮と葉を観察
(何に使われるか、覚えていますか?)

シラキがカラフルに色づいていました

アセビだらけの歩道を抜けて

到着!

お昼前にようやく銅山の集落跡地に到着しました。
ここでは、人々が生活していた跡(食器類やかまどの跡など)がたくさん窺えます。
帰りはスギの人工林の横を通りました

今回の歩道には2箇所ほどアドベンチャーポイントがありましたが…
皆さまケガ無く、無事に散策できてよかったです!

林内散策の後は、御神の滝へ。
前日までの雨でそれなりの流量があり、迫力のある景色に感動の声がちらほら。

滝の前で記念撮影

最後は演習林から帰ってきて閉会式です。
2日間受講された方には宮崎演習林長から修了証が手渡されました。
お疲れさまでした!

残念ながら青空には恵まれませんでしたが…
今年度も無事に全ての行程を終えることができ、
参加者の皆さまにも楽しんでいただけたようで、嬉しく思います。

この公開講座、リピーターの方も多く、ここ数年は季節と場所を変えて実施しています。
次回の開催予定については未定ですが、今後も椎葉村観光協会さんと共に楽しい企画ができればと思っています。
機会がありましたら、初めての方も、リピーターの方も、
ぜひぜひご参加くださいませ~!

2024.11.01. fujiyama

台風後


台風は過ぎ去ったあとも色々と大変です。

台風通過後に山林を含めた被害状況の確認を行いました。

重機を使って林道上の土砂を撤去したり、簡易な補修を行いながら、車で行けるところまで進みます。

土砂撤去の様子

実習に参加するときの服装

 今回は、実習に参加する際に推奨する服装について紹介します。

まず基本的には長袖長ズボンをお勧めします。野外では虫にさされることが多いです。トゲのある植物やかぶれる植物もいます。基本的に肌を出さないことは野外での鉄則です。(と言いつつ、宮崎演習林は比較的虫が少ないので、私は半袖でいることもよくありますが、、)

次に大切なのは、長めの靴下です。よくくるぶしまでの丈の短いスニーカーソックスをはいてくる人がいますが、それはおすすめしません。なぜなら、靴下と長ズボンの間に隙間が出来てしますので、そこを虫に刺されたり、土がズボンや靴の中に入ってきたりします。長めのソックスであれば、もしヒルが多い場所や斜面で土が靴に入りやすい環境では、靴下に長ズボンをインすることもできます!

靴ですが、高価な山靴である必要はありませんが、底にギザギザのついていないスニーカーなどはとても滑りやすくて危険です。長靴は調査に向いていますが、山登りには不適です。そして、雨でも実習は行いますので、靴が濡れたりドロドロになる可能性があります。靴を持って来ていない場合、そのドロドロの靴で帰ることになります。私は出張で調査に行く際には折り畳み可能な長靴をよく持参します。人によってベストは異なりますが、滑ったり濡れたりするのが嫌な人は、山靴や長靴を持ってくることをお勧めします。

あと、意外にリュックサックを持って来ない人がいますが、必ずリュックサックは持って来てください。お弁当や調査道具などを入れる必要があります。そして、両手はあけておかないと、斜面などでは危険な場合があります。100円ショップで売っているような簡単なナップサックで良いので、必ず持って来てください。(※そして天候によって、リュックもドロドロになる可能性があります。。)

また、コンビニなどで売っているような軍手も持ってきた方が良いと思います。必ずしも必要ではないので特にアナウンスされることはないことも多いですが、森を歩くときに地面に手をついたり木をつかんだりすることがあります。その際、素手で触るのが嫌な人は、軍手を持って来ておいた方が良いです。

最近は安いお店もたくさんありますので、そのようなお店を有効活用しながら、万全の体制でお越しください!何か不明なことや心配なことなどあれば、いつでも実習担当教員に聞いてみてください。


Katayama

椎葉村大河内地区の作物体系

椎葉村大河内地区では焼畑を「ヤボ」,火入れしない普通の畑を「ジョウバタ」と呼称していました。下の表は年間を通じた大河内地区の作物体系を示しています。主食であるヒエが最も重要な作物でしたので,新たに「木おろし」(畑にする森の木々の伐採の意味)を行います。伐採した森に火を放ち(火入れと呼称します)林地に樹木の灰を肥料として残します。火入れ1,2年目は最も肥沃な土壌になりますので,ヤボには主食であるヒエを主に作りました。次に少し土壌の養分が少なくなってきたヤボには小豆や大豆といった多少痩せた土地でも成長できる作物を栽培しました。土壌の養分の変化に伴い栽培植物の種類をきめ細やかに把握していた事がわかります。

大河内地区の作物体系.作付面積により棒グラフの幅を大(0.5ha 以上),中(0.1~0.5ha),小(0.1ha以下)に区分し,作付頻度の高い作物を黒色,中程度を灰色,低い作物を白色で示す.

 (2011椎葉と内海)

椎葉村大河内地区の焼畑の歴史

 

宮崎県椎葉村では古くから焼畑農業が行われてきました。焼畑農業は世界中で長年行われている農業形態で,日本でも山間地においてかつては普通に行われていました。

宮崎演習林が所在する椎葉村大河内地区でも長年にわたり斜面に火を放ち,樹木や草の炭を肥料とする焼畑農業が行われてきました。しかし戦後になって現金で食料が購入できるようになってからは,ほとんど行われなくなっています。宮崎演習林がある大河内地区の焼畑従事者に伺ったお話をもとに大河内地区焼畑について紹介ます。

 焼畑は椎葉村においてかつて生活の基盤であり,九州大学宮崎演習林が所在する大河内地区では 1970-1975年 頃まで広く行われていました。焼畑には火入れの時期に応じて「春ヤボ」と「夏ヤボ」の二通りがあり,大河内集落では春ヤボ を行うことが多かったそうです。ちなみに「ヤボ」は焼畑を意味します。春ヤボでは一般に当年にヒエを生産し,翌年からはアワやアズキなどを 2-3年作りました。夏ヤボ では当年にソバを作り, 2年目にヒエ,アワ, 3年目にはアズキやダイスを作りました。春ヤボは集落から離れた比較的古い林地の斜面に作られることが多かった。そうです。その理由としては主食であるヒエを生産するための肥料として焼畑で得られる木灰が多く残ることが理由です。これに対して夏ヤボは多くの場合,若い林地に開設されました。明治から昭和初 期にかけては春ヤボの場合は約 15-20年,夏ヤボの場合は 78年の休閑期間の後に再び焼畑が行われていましたが, 1940年 頃から積極的に焼畑にスギを植林するようになり,次第にスギの造林地に転換されていきました。

マレーシア サラワク森林局とのMOU締結記念シンポジウム

このたび、 九州大学農学研究院とサラワク森林局との学術交流協定が締結されることになりました!それを記念して、シンポジウムを開催します!!ご興味ある方はぜひご参加ください!!




「生物リスト」をリニューアルしました

  演習林のホームページをWordPressに変更したのを機に,これまで公開していたデータベースの生物リストをリニューアルしました。

 生物リストは 演習林の職員が日頃からデジカメを持ち歩き,コツコツと撮影した写真を図鑑で種名を調べ,データベースにしたもので,約2000種のデータを構築しています。ホームページでは見やすいように分類や科名等で整理し,ご紹介しています。

 下記のURLからご覧ください。

http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/miyazaki/database/

 

 2024.06.10 kubota

 


 

イベント報告と講演会の宣伝

5月18-19日に椎葉村でイベントしてきました!いつもの公開講座と同じようなスケジュールですが、今回は宮崎大学との共催です。内容はちょっと玄人向けで、「ブナの保全を考える」でした。およそ20名くらいの方に参加頂き、1日目の講演会、2日目の白鳥山登山を無事に終えました。ササの開花も見ることができました!宮日新聞にも紹介頂きました。


とても巨大なイチイをみることができます。
椎葉村の人たちにとって、白鳥山(の御池周辺)は神聖な場所とのことでした。


柵が設置されていて、柵内は(たぶん)スズタケが残っていました。
そして、開花していました!
これからこのササがどうなるのかとても楽しみです。

秘境のインタープリターであるやまっちさん
山歩きのガイドをつとめてくださいました。
いつも我々がやるような山歩きの自然観察だけでなく
大きなイチイのしたで寝転がって目を閉じてみる、
ルーペを使ってコケの写真を撮って見せあう
など色んなアクティビティがあって、とても楽しかったです!

ところで今度(6月12日12:10-12:50)、オンラインで行う講演(九大アジア・オセアニア研究教育機構が主催するブラウンバッグセミナー)があります。話す内容は今回のイベントとほぼ同じ内容で、最近の研究で分かってきた、シカ増加によるササの消失が森林生態系に与える影響についてです。どなたでも参加可能ですので、ぜひご参加ください!!(事前登録が必要みたいです。)

詳細はこちらから 

事前申し込みはこちら 


Katayama

ライトセンサスを実施しました

 シカは夜行性であるため、この調査は日没後に計測を開始し、林道を時速 8km前後で走行するトラックの荷台から2名の調査員が左右にスポットライトを照射、運転手はトラックのライトをハイビームにして、シカを含めた野生動物を3日間探索しました。

 この調査は2005年(19年前)から宮崎演習林が主体となって行っています。

 

調査の様子

 

シカ発見!

 

奥のライトに4頭のシカがいます

 シカの目はライトの光を反射するので、夜間でも比較的容易にシカを発見できます。

 シカは3日間で19頭ほど確認しました。また、シカ以外の動物はノウサギ、タヌキ、ムササビ等を確認しました。

 

遠くにいたムササビ

 2024.05.21 kabe