今年もお世話になりました

気づけば年末です。
今年も一年、大きな事故もなく山での活動を終えることができました。

冬の到来

つい最近、12/18頃の寒波で宮崎演習林にも雪が降りました。 標高1000m付近では、積雪10cmといったところでしょうか。このくらいの時期から氷柱も生成されるのですが、毎年同じような場所で氷柱の写真を撮っていることに気づきました。何かしら惹かれるものがあるんでしょうね。

さて、この日は演習林内の気象観測をしている場所まで行き、蓄積データを回収する予定でした。実際に行ってみると、機器を動かすためのソーラーパネルに雪が積もって少し凍りついていました。このままだとバッテリーの充電が十分に行われず、機器が止まってしまうので掃除を行います。



 1度雪が少し溶けた後で再び凍ったような質感だったので、なかなか手間取りましたが、これで大丈夫でしょう。データの回収を行うと、12/18、12/19の1日の平均気温は-5.0℃前後でした。

 

 雪が降ると大変なことも多い一方で、普段とは違ったものを観察することができます。シカやタヌキ、キツネ、ウサギといった野生動物の足跡です。雪の上を歩いた痕跡がしっかり残っていました。土の上でももちろん足跡は残りますが、雪上だとより目立ちますね。



 
 
私は雪とはあまり馴染みがない地域で生まれ育ったので、今でも雪が降ると少しうれしいような気持ちになります。まあ、今後北海道演習林で勤務するようになると、除雪や凍結などでうんざりしてくるような気もしますが、、、
何はともあれ、今年も演習林に冬がやってきました、という報告でした。
 
                          2022.12.21  山内

 

山の神

ずいぶん前になりますが、9月16日に山の神を執り行いました。

ブナ衰退を食い止める!

 台風14号の爪痕が残ってはいるものの、宮崎演習林は通常営業です!11月末には三方岳のブナを保全するために、リター被覆を行いました。三方岳ではもともと2mを超えるスズタケが密に生えていましたが、シカにより今は林床には何も生えていません。標高が1400mを超えるので冬季は土壌凍結します。土壌をまもる下層植生がないこと、土壌の凍結融解が起こること、このふたつの要因によって過度な土壌侵食が発生しています。そして、土壌侵食により根が露出・枯死することで、ブナの枯死が起こっていると考えられています。

というわけで、ブナの樹冠下をリター(落葉)で覆うことで、土壌侵食を防止します。副次効果として、リターからの土壌への栄養供給、土壌環境の安定化を期待しています。これらの効果により、細根の枯死を防ぎ、水・栄養循環の改善を期待します。


学生さんに手伝ってもらって落葉を集めました!


リター被覆していない場所は土が削られていますが、
リター(落葉)を被覆してネットで止めることで、侵食から土壌を守ります。
10㎝程度の高さを目安に落葉をまきました。
1年後にこれが腐植土となって土に栄養を与え、細根が増えていることを願っています!

現在、ブナ衰退は、十分な給水ができていないことが原因であるというデータがあります。今回のリター被覆により、ブナの水分状態が改善するか、また土壌環境や土壌生物などが変化していくのか、今から2年程度モニタリングしていく予定です。うまくいくといいな!


2022・12・14 Katayama

令和4年台風第14号が九州に上陸しました。

此度の台風14号は非常に大型でした。

被災された方々、心よりお見舞い申し上げます。

私達、宮崎演習林も少なからぬ影響を受けておりまして、被害の全容はまだつかめておりません、、、。


宮演事務所周りの道でも、切土・盛土のり面の崩壊がいくつも起きました。順次復旧が進んではいますが、通行止めの箇所もまだまだ多く、演習林内の移動も難しい状況です。防災情報提供サービス(無償版)を見ると、宮演事務所周りでは、特に、388号線などで、多くの崩壊が起こっていたのではないかと推察されます。



これは、事務所から北へ、数百メートルほど歩いていったところの写真です(国道388号線)。

そんな中、技術職員のKさんとYさんが、演習林内の広野と呼ばれる地域に巡視に行き、気象データを回収してきてくれました。



観測場所はこちらです。一ツ瀬川の支流の大藪川上流部です。標高は約1,000mの地点です。



こちらが回収された気象データ(の一部)です。
9月11日に降り始めた雨が、断続的に続き、17日から18日にかけて、とても強い雨(>10mm/10分)が降っているのが分かります。

11日から19日までの累積雨量は1483mmにもなり、17日と18日の二日間で1079.5mmの雨が降りました。時間最大雨量は59mm(18日19時~20時)という猛烈な雨でした。

アメダスデータや宮崎県県土整備部が観測している雨量データを見ると、場所による差がかなり大きいようです。また、雨風がすごすぎたのか、途中から欠測になるケースも散見され、演習林で計測されたデータは、けっこう貴重かも知れません。

風速は、12日あたりから平常時の明瞭な日変化(日中にやや強く、夜に風が吹かないという局地循環に起因する日周変動)が見られなくなり、17日から18日にかけて、約15m/sまで増大しました。鹿児島市付近に上陸したときには、15 m/s以上の強い風が吹きました。

※なお、ここでお見せした風速を正確に表現すると、「10分毎に記録された10秒間平均風速の最大値」となります。気象ニュースなどでよく見る”最大瞬間風速”は3秒間平均風速なので、直接比較することができない点に注意です。※

被害の状況についても、また追ってご報告いたします。

2022.09.26 TK

森林科学入門(山岳森林コース) 後半

前半に引き続き、後半を紹介していきます。


道の途中に苔むしゾーンがありました。
ちょっとした谷部になっていて、
岩が集まってそれにコケがついたようです。

袋の中に葉っぱがいっぱい!

森を出ました。
ここは必ず(市橋さんは)立ち止まるスポット、
そうです、マツブサちゃんのいるところです。
マツブサのにおいが(市橋さんは)大好きです。
今回の実習で色んな葉っぱや枝のにおいをかぎました。
カツラ、コブシ、ミヤマシキミ、シキミ、ミズメなどなど。
どのにおいが一番好きですか?(私はコブシです。)

帰ってきたらグループごとに研究テーマの相談です。
グループで相談してきた内容を教員・技術職員に説明してもらい、
4日目の調査の内容に落とし込んでいきます。
全グループ、とても面白そうなテーマを作り上げました!こうご期待~~


4日目
いよいよ、各班調査に行きます。1-3日目は丸十エリアと呼ばれる比較的アクセスのよい場所に行っていたのですが、4日目は研究材料にあわせて場所を選びます。


1班は樹種や下層植生の有無によって土壌水分がどのように変わるかを調べました。
もっとも過酷な調査となったようです。
これはササありプロット。さて、どこに人がいるでしょう??
人が見えないくらいササが茂っているので、ここを歩くのは大変です。
さらにここは急斜面なので、ここで調査するのは本当にハードなのです。
(本来はもっと密度の高いササが生育していました。)

こちらは若い人工林。
本数がとても多いので、歩くのも大変です。

こちらは皆伐跡地。不成績造林地です。
夏になると草本類が背丈を超す高さに成長し、過酷なヤブ漕ぎとなったようです。
こんな大変な調査だったにもかかわらず、1班の学生さんたちは
さわやかに、「大変でした!でも楽しかったです!」と言ってました。
スゴイ・・・、、お疲れ様でした!!

2班のテーマは様々な樹種で葉っぱと葉柄の長さの関係を調べることです。
1-3日目に樹木を覚える際に、樹種によって葉柄が長いことに
疑問をもったようです。(特にツルは長かったですよね~~)
葉っぱ取りに大藪・まきはなあたりに行きました。
目的の樹種を探すのに一苦労です。


無事に葉っぱを採取し、近くの御神の滝にて昼食。
御神の滝は冬になると凍るんです(コレとかコレとか、見てみてください!)



3班は大藪川(一ツ瀬川の支流)の源流から一ツ瀬川に合流するまで、
水温や水質がどのように変化するのかを調べました。
最初はこんなにチョロチョロとしていた大藪川が
最後には大きく立派な川になっていく様子を改めて見ると
とても感動的な思いを感じました。

御神の滝も大薮川です。
上流の方は冷たすぎて手がジンジンしましたが、最後の採水地点では
ちょうどよいくらいの水温で水遊びができるくらいでした!

このあとそれぞれのグループは講義室に戻って、葉っぱの面積を測ったり、樹冠写真から開空率を出したり、水のpHを測ったりして、プレゼン準備を行いました。

5日目
いよいよ最終日。

3班は水温が標高とともにあがることや、
天然林面積とともにpHがあがることを発見しました!
とても面白い結果ですね。
宮演は川がとても綺麗で自然のまま残っている支流がたくさんあります。
こんなに良いテーマにこれまで気づきませんでした。
今後、このテーマで実習を行いたいと思います!
調査もとても楽しいですしね!!

1班は土壌水分が森林タイプによって大きく異なること、
特にササありサイトでは土壌水分が低くなることを明らかにしました。
ひとつの森林内では土壌水分のばらつきはリター厚さなどで説明できなかったものの
森林間の違いはリター厚さと関係あることが分かりました。
林分内、林分間の違いや林分内のばらつきに着目していて
とても鋭い着眼点だと感じました。たくさん測定したからこそ、
見つけることのできた結果だと思います!素晴らしい!!

2班は葉柄と葉の関係を調べました。
たくさんの樹種で調べて、葉柄と葉の長さには強い正の相関があること、
その関係性は樹種がかわってもおおむね同じであるが
樹種によっては全然異なる比率であることも分かりました。
これは卒論で出来るテーマですね!もっと色んな樹種のことを知りたいし
個体内でも日の当たるところ、当たらないところで
どの様に変化するのか(あるいはしないのか)を知りたいです。


最後にひとことずつ感想です。
みなさんがとても熱心に参加してくれて、
職員一同とても刺激的な1週間となりました!
みなさんとまた再会できること、そして、
今度はもっと本格的な調査を椎葉で行ってくれるといいなと思っています!!

最後にみんなで記念写真!楽しく充実した1週間でした!!
ありがとう~~~!!!


おまけ① 今回の実習の食事は佐々木さん
椎葉村の地域おこし協力隊テレビでも紹介されていました)が
作ってくださいました。佐々木さんは東京などで修業をして来られた本当の料理人。
「学生からはもうけなんてとれない」という心意気で、
採算無視でとても豪華な夕食&朝食でした!!
最終日はせっかく椎葉に来たのだから、ということで
シカカツ(低温調理したあとにカツにするという手の込みよう)&トンカツカレー!
学生のアンケートでは、食事が最も印象深かったという意見もありました。
(嬉しいような、悲しいような・・・笑)
本当に毎日おいしく頂きました。ごちそうさまでした!!!


おまけ② 今年の学生さんはとても礼儀正しく、常に5分前行動で、
演習林スタッフは驚かされっぱなしでした!!
施設の使い方もきれいで、事務職員さんたちはとても感謝していましたよ~
こんなにきれいに靴を脱ぐ学生さんたちは初めてです!


Katayama

森林科学入門(山岳森林コース) 前半

ついに!3年ぶりに演習林主催の実習が開催されました!!集まったのは様々な学部に所属する1-2年生、10名。4泊5日で椎葉の森を歩き、グループごとに研究テーマを決め、4日目は自分たちのやりたい場所でやりたい調査を行い、最終日に発表するという内容です。

1日目

まずはアイスブレイク。
グループごとに自己紹介+ミラーリングです。

早速、山に出ます。
いつもはこのあと講義なのですが、少しでも山歩きの時間を増やすべく、
講義は事前学習でオンライン配信しました。
手前には全く下層植生がありません。シカに食べられてしまったのです。

でも、柵の中はこんなに豊かな下層植生が生育しています。
ミズナラやコシアブラなど多様な樹木の赤ちゃんがいっぱいです。
(赤ちゃんというか、幼児くらいかな。)


2日目
大河内峠から三方岳に向かう稜線に向かいます。
途中、とても急な斜面も登ります。

市橋先生(今回の実習の主任です。)の目が輝いています。
サルナシとマツブサというツル植物がいました。
ツルも種類によって色んなタイプ
(ホストツリーを殺してしまうやつとか、それほど大きくならなくて奥ゆかしいやつとか)
がいて、とても面白いです。
グループにわかれて毎木調査(胸高直径と樹高)をします。
毎木調査は森林調査の中では基本の基本、
実習では欠かせないはじめの一歩です。



昼休憩~!

からの、お昼寝zzz


毎木調査の残りをやったあと、年輪を見るための材コアを抜いたり、
土壌が樹種などによって異なること、
地温や土壌水分、日射などが森林内でどのように変化するかを体験しました。
最後にスギ林を見て帰りました。
これまで天然林(針広混交林)ばかり見ていましたが、
やはりそれを見た後にスギ林に来ると、違いがよく分かります。
リター(落葉)や土壌の様子も大きく異なることを見ました。

宮崎演習林のようなアクセスが悪く、急峻で、林道も作りづらい環境だと
伐採してもコストが大きくかかること、
現在は効率を求める大面積皆伐が多く、小面積の伐採を行う演習林では
なかなか伐採してくれる業者がいないこと、
伐採後にシカの食害から苗を守ることの難しさなど、
日本の林業問題のひとつの話として紹介しました。


この日は、森を見たあと、樹木学テストがありました。20樹種の葉っぱをみて、樹種を回答するというテストです。戦々恐々としていましたが、みなさんあっさりと合格していました。

3日目

今日も山歩き。郵便歩道(昔、この山道を本当に郵便屋さんが歩いていた)を歩きます。

今回のルートは沢があります。
みんな、童心にかえって水遊び~~
とっても気持ちよかったです!

そして、お昼寝zzz
後半に続く~~~

 

Katayama

宮崎演習林インストラクター認定試験および研修会

 8月2日に宮崎演習林インストラクター認定試験を実施しました.

 この認定試験は一般の方々等を対象として、森林・林業の正しい知識を付与し、森林利用に関わる想の高揚および林業に対する認識の向上を図るため、宮崎演習林がインストラクターの認定および登録しているものです.

 なお、宮崎演習林では教育・研究目的外での一般入林を認めていませんが、認定したアドバンストインストラクターが同行すれば入林が許可されます.

  宮崎演習林インストラクターの認定試験は2種類あり、まず「インストラクター」の試験があります.インストラクターとして3年以上活動していただくと、「アドバンストインストラクター」認定試験があります.

 この2つの違いは、「インストラクター」は演習林教職員あるいはアドバンストインストラクターの同行のみ活動ができます. 「アドバンストインストラクター」は演習林で定めたコースであれば単独で活動ができます.

 

久米林長による概要説明

 

技術職員による樹木学

 

インストラクター試験には2名の方が受験されました

 

 また、コロナ禍のため思うように実施できなかった「アドバンストインストラクター研修会」も3年振りに同時開催しました.

 

アドバンストインストラクター研修会には5名の方が参加されました

 

 

合同で樹木学

 

試験地の説明

 

 

樹木識別中(この後、試験があります)

 

アドバンストインストラクター研修会

 

 今回は2名の方が「宮崎演習林インストラクター」に合格されました.

 これからアドバンストインストラクターの方々と一緒に宮崎演習林をご活用ください.

 参加された皆さま、暑い中お疲れさまでした.

 惜しくも今回、認定試験または講習会に参加できなかった皆さま、来年お待ちしております. 

 

宮崎演習林のガイドを希望される方は、下記URLをご確認ください。
 

2022.08.31 kabe