実習「森林科学入門」の紹介です

8月19-23日は森林科学入門という実習が行われました。今回はこの実習について紹介したいと思います。

森林科学入門は、九大生の1年生、2年生ならどの学部の学生でも受講することができる講義(実習)です。九大の北海道演習林、福岡演習林、宮崎演習林のそれぞれで開催されます。宮崎演習林は椎葉村にある奥深い森が広がる演習林です。学生も初めて来る人がほとんどでした。

1日目は人吉に集合して、そこから演習林に向かいます。演習林スタッフが送迎するのですが、人吉から車でおよそ80分!タクシーでは2万円弱もかかる距離です。離合できないくらい細い山道を走るので、車酔いが心配でしたが、幸い演習林に到着した学生さんはみんな元気でした。

演習林到着後、講義をして、今回の実習で必要な基礎知識を学びます。


3日目以降行うグループ研究のために必要な基礎知識や考え方を学びます。

 
初日の夕飯はBBQです!とてもたくさんのお肉が準備されていて、食べきれませんでした、、残ったお肉は次の日のカレーの具材になって、とても豪華なカレーとなっていました。
BBQの前にアイスブレイク。簡単な自己紹介を1分で行いました。


BBQは屋根付き椅子付き!1分間自己紹介を元に他己紹介してもらいました。


2日目は森を歩きます。しかしあいにくの雨、、椎葉は降水量が3000㎜を超える多雨地域です。こういうときは、雨の森を楽しみます。

晴れているととても眺めの良い展望台ですが、この日は真っ白でした。

写真左と右では地面の様子が全く違うのが分かりますか?最近、宮崎演習林周辺ではシカが増えて下層植生が食べられ、ほとんどなくなってしまいました。左側はシカ柵を作ってシカが入れなくなった結果、下層植生が回復してきているのです。
   



ブナやモミツガの生える森を歩きます。
 午後は樹木の名前(15種)を覚えました。帰ってきてテストをしたのですが、みなさんすぐに名前を覚えていました。すごい!

3日目は三方岳の登山道を途中まで登りました。天気がとても良くて、素晴らしい景色を見ることができました。



尾根沿いには大きなブナが生育しています。ただ、最近は枯死している個体が多いようです。

景色の良い開けたところで、グループごとに色んな計測を行いました。

お弁当もここで食べました。コーラス部男子の「やっほーーーー」がとても素晴らしく、何度もこだまするのが聞こえました。

女子はタピ活についての話題で盛り上がっていました。

斜度およそ30度の急斜面を登り(下り)ました。
 帰ってからは、グループごとに自由研究のテーマを話し合って決定しました。

4日目はグループごとに調査を行います。私がついていった班は、土壌浸食と樹木の成長について調べていました。宮崎演習林の森はかつて、林床にはササが繁茂していたのですが、シカが増えたせいで、今、林床には下層植生がほとんどありません。そうすると、森に降る雨が直接土壌にあたって、リター(落ち葉)や土壌を削って流れてしまいます。その結果、樹木の根が露出して、既にたくさんの根っこが死んでいる状況となっています。それにより樹木の成長も悪くなっているのではないか、ということをテーマに取り組みました。


とてもたくさんの根が露出しています。
事務所に帰ってきてから、取ってきたデータから何が言えるのかを議論して、プレゼンを準備してもらいました。たった1日の調査ですが、みなさんたくさんのデータを取ってきていました。データから何かを見つけだすこと、何が言えるのかを考えることはとても難しく、各グループ、議論がとても白熱していました。この日はとても長い1日となりました。

5日目にグループごとに研究成果を発表してもらいました。学生からの質問や意見もすごくたくさん出て、とても良い会となりました。最後に全員から感想を言ってもらいました。実習のメンバーがとても良かったこと、初めて計画~調査~解析~発表を本格的に行って、これだけたくさんの議論をしたのが初めてでとても勉強になったこと、椎葉村という山奥で5日間過ごすことが不安だったけれどもあっという間だったこと、食事がとても美味しくて、夜食のワッフルをひとつも食べなくて済んだこと、など、とても色んな感想が出てきました。みなさん、この実習をとても楽しんでくれたようでした。私たちもとても楽しかったです。ありがとうございました!また来年の開催を楽しみにしています。

シーボルトミミズ

調査地での作業中,土の中から頭(尻?)がのぞいているのを見つけました.何となく突っついてみたところ,



速い.
そして最後は道路に落ちていったね.ごめん.


シーボルトミミズ,この辺りではカンタロウと呼ばれています.関東で生まれ育った私は比較的最近,九州に来てからその存在を知りました.ミミズらしからぬ色と大きさに衝撃を受けたものですが,動きもミミズ離れしてますね.ただ,そういえば以前どこかでつまみ上げたとき,「全身筋肉」というようなハリのある体をしていたことを思い出し,それはそれで腑に落ちる気もしたのでした.

2019.8.23. 市橋

山の置きみやげ


ちょうど一年前のことです。
間伐予定地の照査中に奇妙なものを見つけました。
ヒノキの造林木にもたれてひっそりとたたずみつつ、
しかし、周囲の景色とは異質な存在感を放ってソレはありました。
一見したところ背負い式の噴霧器に見えます。
製造プレートをみると「合資会社林ポンプ製作所」との記載が。
噴霧器に似ますが、ジェットシューター(背負式消火水のう)かもしれません。
いずれにせよ、かなり古い代物であるのは確かです。

ジェットシューターは山火事のさいに人力での消火に使用します。
ですから山仕事に関わる人にはお馴染みです。
一方、造林当初の林木には病気が出たりしますので、噴霧器を山に持ち込んだ可能性も否めません。

気になって、台帳をひも解いてみると、あった、ありました。
”第21林班○小班、昭和44年(1969)、伐採跡地に火入れ地拵を行った後、スギとヒノキを植栽”
の記述が。
「火入れ地拵」、つまり焼畑と同様に伐採跡地の地表を枝条ごと焼いてしまう地拵作業です。地力の増進が図れる反面、技術的な問題や山火事のリスクもあり最近はめったに行われません。

これではっきりしました。件のモノは50年前のジェットシューターでした。
しかし、どうしてずっと山の中に置き去りにされたのか?
この場所は道路からのアクセスがきわめて悪く、険しい隘路があるだけで、健脚でも小半時を要します。

そんな所に、背中のタンクに水を満載して消火に往復したであろう当時の先輩が、
「やってられるか!」と現地にぶん投げて帰ったとしても不思議ではありません。
植栽後、育林作業で何度か現地に足を運んでいるはずですが、山仕事で疲労しての回収は気が進まなかったのでしょう。
その気持ち、よ~く理解できます。

とはいえ、そのままほったらかしなのも気の毒なので、昨年末に引き揚げてきました。ジェットシューター氏、実に半世紀ぶりの帰還です。

長年風雨にさらされて、すでにその機能は失われていますが、原形をよく留めてます。
山仕事の歴史を語るモノとして、これからは大事に保管したいと思います。
                        (2019.08.14 D.O.)