災害多発地の椎葉側でなく、県境向こうの球磨側に被害が出たことを意外に感じました。
しかし、夜が明けてからも雨脚の弱まる気配はなく、ここでも災害に備えて準備を始めました。
一ツ瀬川源流の峻険な山々に囲まれた僻地で、かつ人口希薄地の当地では、道路、電気、水道といった生活インフラは極めて脆弱です。
道路の寸断による孤立化、長時間停電、断水は珍しくありません。また、宮崎演習林庁舎は災害時の避難所に指定されています。
そこで、庁舎付帯の宿舎に住んでいる職員は、自身の避難準備と並行して庁舎を点検し、発電機や燃料の搬入、飲料水・一般用水の確保など避難受け入れ準備を行ないます。
そして、ひと通りの準備が終われば、あとは各所からの連絡に備えての災害待機となります。
そうしているうちに「あそこの道路が崩れた」とか、「どこそこへ抜ける道は土砂が流れだしている」といった地元情報が入りだします。
それらの情報を収集しながら、演習林の中がどうなっているか気がかりでなりません。
しかし、雨の中では二次災害の危険もあり、ジリジリと疲弊しながら雨のやむのをひたすら待ちます。
7月13日、降雨発生から11日目、「令和2年7月豪雨」と称された大雨が漸くやみました。降り始めからの雨量は、演習林事務所での観測値で1,000mmを超える記録的豪雨でした。
さて、雨がやむと山林、道路の被害確認、「林内巡視」に行くのが慣例です。
トラックにありったけの土工道具やチェンソーを積んで出発します。
この辺りの道路は、国道も含めて急峻な地形につけられた隘路ばかりです。
普段の雨上がりでも落石や出水、洗い出した土砂に悩まされるので、こういった大雨の後は特に注意を要します。
演習林へ向かう村道。アスファルト下の路盤材が浸食されたのでしょう、路面が凸凹です。
道路沿いの治山堰堤。地山へすりつける基礎部分が流されいます。この時点で先行きにかなりの不安を感じます。
演習林内の道路状況です。山からの排水が捌けきれずに路面を洗っています。
そして、その流れが路面を浸食しています。
沢が土砂で埋まり、排水が機能しなくなった場所では流水が滝のように路肩をけずっています。
こうした路肩の決壊もあちこちで発生していました。
ここでは、法面から洗い出された土砂が道路を塞いでいます。
比較的大きな谷には大径のコルゲート管を設置していますが、それでも水を捌けきれなかったのでしょう。太い丸太が道に押し上げられていました。
予想した通り、林内の道路ではあちこちで損傷が生じていました。ただし、総合的な判定としては、自力復旧可能な範囲での被害にとどまりました。
なにより恐れていた斜面の崩壊や地滑りといった大規模な災害が起こらなかったのは本当に幸いでした。
一昨日より、さっそく復旧に向けて作業にとりかかりました。
演習林内の道路は、ほとんどが未舗装で頻繁なメンテナンスを必要とします。その反面、手持ちの機械ですぐに施工できる即応性にすぐれる利点があります。
しかし、山に水が飽和している状態では危険も高いので、本格的な復旧は梅雨明けとなりそうです。
今回に限らず、ここでは大雨や台風がくるたびに自身の安全と管理山林への心配からストレスが高まります。しかし、それこそが宮崎演習林の山守としての務め、ともいえます。
日頃から災害への備えは怠らず、あとは運を天に任せるほかはなさそうです。
2020.7.18 D.O