道端の花特集

春ももう半ばを過ぎたでしょうか.山の上では新緑の中にまだ桜が残り,沢沿いにはツツジ類が色鮮やかに咲き誇っています.良い季節です.

ツクシアケボノツツジとミツバツツジ

この時期,家の周りや道路脇の,いわゆる雑草たちも一斉に花を咲かせて賑やかになります.一つ一つはそんなに目立つこともありませんが,足を止めて見てみればそれぞれに魅力的です.今日はそんな小さな草花を事務所の周りで探してみました.


まずはキク科の黄色い花.キク科の草本種は本当にたくさんいます.花も姿も似たものが多く,憶えるのがなかなか大変です.
(左)オオジシバリ,(右)ニガナ,(下)ハハコグサ
オオジシバリやニガナはよく群生し,黄色い花畑を作ります.ハハコグサは控えめな印象で,全体の姿や手触りに独特の柔らかい雰囲気があります.春の七草の一つ(ゴギョウ).食べたことないですが,ヨモギのように餅に混ぜたりしていたそうです.


ハコベの仲間(ナデシコ科)この仲間にも色々な種があるのですが,みな小さな白い花をつけます.よく同じ場所で混ざり合って生えており,今回は4種見つけました.
(左上)ハコベ,(右上)ノミノフスマ,(左下)ミミナグサ,(右下)ノミノツヅリ
花弁は5枚だが,上2種は各花弁が深く切れ込んで10枚に見える
ノミのものシリーズ,「小さい」「とるに足らない」というニュアンスで侮られていますが,ノミノフスマは野草の中でかなり可憐なタイプだと思います.ノミノツヅリは控えめな花ですが立ち姿が良く,よく乾いたアスファルトの隙間などに密集し,生きながらにドライフラワーのような趣を見せてくれます.あとミミナグサですね.外来の「オランダミミナグサ」はどこでもたくさんいるのですが,在来種を見たのは初めてかもしれません.


イヌノフグリの仲間(オオバコ科).オオイヌノフグリは本当にどこにでもいますね.ありがたみはないですが,やっぱりかわいいと思いますし,子供の頃から春の象徴の一つです.
(上)オオイヌノフグリ,(左)タチイヌノフグリ,(右)フラサバソウ.ふぐり3兄弟
タチイヌノフグリとフラサバソウ,花が小さくて目立ちませんが,よく探してみるとオオイヌノフグリと混ざって一緒に生えていることが多い気がします.みんな外来種.もともと日本にいた「イヌノフグリ」は,今では数を減らして絶滅危惧種になっています.


唇状花が特徴のシソ科草本も,道端群集の重要なメンバーです.ここではざっと3種が見つかりました.
(上)カキドオシ,(左)キランソウ,(右)トウバナ
全体的にシソ科の造形は,美しさと面白さと不気味さの間にあるような気がします.この中でカキドオシはなかなか良い感じですが(良い匂いもします),トウバナはどうでしょう.よく見ればかわいいでしょうか.


ハナイバナ(ムラサキ科)がいました.同じ科のワスレナグサ・キュウリグサをシックにした感じで素敵です.
(左)ハナイバナ,(右)鉢植えキュウリグサ
私はこの仲間が個人的に好きで,毎年春に見つけると胸が熱くなります.キュウリグサはこの付近で見かけないので鉢植えにしてみたのですが,一般にはハナイバナよりもずっとありふれた種です.どこでも大抵近所にいますので,知らない方はぜひ見つけてみてください.


ウマノアシガタ(キンポウゲ科).うまく撮れませんでしたが,花びらにつやつやとした光沢があり,それがこの仲間の特徴になっています.
車道沿いなどに群生しているのを見かけます.光沢のためか他の花より明るく見え(目の端でキラッと光る感じ),遠目にも目を惹きます.キンポウゲ(金鳳花)はこの種を指すようです.


最後にスミレ2種.スミレ属だけで図鑑ができるほど種が多く,また昔から愛されてきたグループです.
(左)スミレ,(右)ツボスミレ.たぶん
「スミレ」という名前には何となく儚そうだったり高貴なイメージがある気がしますが,割とどこにでもいてたくましいタイプだと思います.右のツボスミレ,私は初めて出会いましたが美しいですね.スミレの中でも小さく目立たないのですが,写真に撮ったらきれいで驚きました.全国的にごく普通種なのだそうです.


事務所の周りをほんの2,30 m歩いただけで,色とりどり,バラエティ豊かな草花が見つかります.このように色々なものが狭い範囲に集まっていることが,雑草観察の楽しさの一つです.また,少し場所を変えるだけで,種がどんどん入れ替わっていきます.見ていて飽きません.

今回見つけた中に特に珍しい種はおらず,多くは都市の市街地などでも普通に見つかるものだと思います.その一方で,ほとんどが日本在来の種であって外来種が少ないことに驚いています.都市部の道端には外来種が非常に多い(感覚的には8割くらい)のですね.個人的にはそんな外来種群集も楽しいですが,例えば在来のミミナグサを見つけると嬉しいのも確かです.さすが椎葉だと思いました.

気が向いた方は,たまに足をとめて道端を眺め,そして1つ2つ,気に入った草花の名前を調べてみてください.身近な場所から世界が広がるかもしれません.

その他見つかったものをまとめて.(左上)ムラサキケマン,(右上)カタバミ,(左中)スズメノエンドウ,(右中)レンゲソウ,(左下)ヘビイチゴ,(右下)ヤエムグラ.
今日のメンバーの写真を撮っているとレンゲソウがとても大きく見えます.

2020.4.26 市橋