5月6月は白い花

春の終わりから梅雨の時期,
山間部では小さな白い花を付けた低木が目立ちます.
ウツギ(アジサイ科)
目立ちます,と言っても…
春から続いたサクラ,ミツバツツジ,アケボノツツジ,フジ……といった華やかなものたちと比べるといまいち目を引かないのですよね.そうして毎年気になりながら何となく見過ごしてしまっていたこの季節の花に,今回は注目してみました.


改めてウツギから.
ウツギ(空木)の名前通りの中空の軽い材,大雑把な枝の作り方など,
何となく「雑・適当」な印象がある樹体ですが,花は端正です.
つぼみが玉になっているのが良いと思う
同じウツギ属のマルバウツギ

椎葉の道端でよく見かけるツクシヤブウツギ.
咲きはじめは白花ですが,時間が経つにつれて赤く色づきます.
ツクシヤブウツギ(スイカズラ科)
「ウツギ」の名ですが先の種とは違ってスイカズラ科に属します(中空の軽い材を持つ低木に「ウツギ」が付く)


ウツギと並んで道路脇で目立つのがこの野バラ

ヤブイバラ(バラ科)
良い香りがあるそうです.気付かなかった.
近縁のノイバラはごつい棘がやたらと服や皮膚に引っかかって困りますが(野外調査の時など滅びればいいとよく思う),ヤブイバラはそれより繊細そうで,もう少し良い印象を持っています.木登りが好きで,高さ10m以上の樹冠にいることもあります.


エゴノキもきれいな白い花をたくさん咲かせます.けれど,樹冠の中で下を向いているので目立たず,遠目ではなかなかわかりません.
エゴノキ(エゴノキ科)
落ちた花で地面が白くなっているのを見て気づく
エゴの花はすっきりとしていて良いですね.花が落ちたあと,白くて丸い実が枝からたくさんぶら下がる様子も面白いと思います.


美しいけれど葉陰に隠れて目立たない花と言えば,ヒメシャラも.
ヒメシャラ(ツバキ科)
雨に濡れると半ば透き通るようです
つるつるの赤い幹で有名な高木です.高木だから目に付かないということもあるのですが,十分目が届くサイズの個体であっても(事務所前に数本あります),開花に気づかぬまま花期が終わっていた,ということが多いのです.

まだまだ,ガマズミなどの低木(亜高木)や,
(左)ミヤマガマズミ,(右)コバノガマズミ(ガマズミ科)

(左)カマツカ(バラ科),(右)ハイノキ(ハイノキ科)
つる植物にも,
(左上)サルナシ(マタタビ科),(右上)テイカカズラ(キョウチクトウ科),(左下)スイカズラ(スイカズラ科),(右下)おまけでマタタビの葉(マタタビ科)
マタタビは花の季節に葉が白くなります.
いかがでしょう.分類群を越えて白い花が多く,何となく似た雰囲気がある気がします.


春先には赤・黄・紫など鮮やかな色が目立ち,その後は白花が多くなる,ということにもちゃんと意味があるのでしょうね.虫とのお付き合いとか,いろいろと.私には見つけにくいエゴノキやヒメシャラにも,ハチから甲虫までたくさん虫が集まっていました.

今回は改めてこの季節の白い花々に注目してみました.風景の中ではいまひとつ目を引かなかったのですが,よく見ると白特有の品の良さ,清楚さのようなものが感じられました.そして,白い花は雨に濡れるとよりきれいに見えます.この季節に映える色なのかもしれません.

2021.6.17 市橋