あかぎ通信は九州大学宮崎演習林の職員が,日々演習林での仕事の様子や出来事などを公開するページです. あかぎとは,宮崎演習林内に多く生息するヒメシャラと言う樹木の方言です. みなさまのご来演をお待ちしています.
冬の到来
つい最近、12/18頃の寒波で宮崎演習林にも雪が降りました。 標高1000m付近では、積雪10cmといったところでしょうか。このくらいの時期から氷柱も生成されるのですが、毎年同じような場所で氷柱の写真を撮っていることに気づきました。何かしら惹かれるものがあるんでしょうね。
さて、この日は演習林内の気象観測をしている場所まで行き、蓄積データを回収する予定でした。実際に行ってみると、機器を動かすためのソーラーパネルに雪が積もって少し凍りついていました。このままだとバッテリーの充電が十分に行われず、機器が止まってしまうので掃除を行います。
1度雪が少し溶けた後で再び凍ったような質感だったので、なかなか手間取りましたが、これで大丈夫でしょう。データの回収を行うと、12/18、12/19の1日の平均気温は-5.0℃前後でした。
雪が降ると大変なことも多い一方で、普段とは違ったものを観察することができます。シカやタヌキ、キツネ、ウサギといった野生動物の足跡です。雪の上を歩いた痕跡がしっかり残っていました。土の上でももちろん足跡は残りますが、雪上だとより目立ちますね。
ブナ衰退を食い止める!
台風14号の爪痕が残ってはいるものの、宮崎演習林は通常営業です!11月末には三方岳のブナを保全するために、リター被覆を行いました。三方岳ではもともと2mを超えるスズタケが密に生えていましたが、シカにより今は林床には何も生えていません。標高が1400mを超えるので冬季は土壌凍結します。土壌をまもる下層植生がないこと、土壌の凍結融解が起こること、このふたつの要因によって過度な土壌侵食が発生しています。そして、土壌侵食により根が露出・枯死することで、ブナの枯死が起こっていると考えられています。
というわけで、ブナの樹冠下をリター(落葉)で覆うことで、土壌侵食を防止します。副次効果として、リターからの土壌への栄養供給、土壌環境の安定化を期待しています。これらの効果により、細根の枯死を防ぎ、水・栄養循環の改善を期待します。
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学生さんに手伝ってもらって落葉を集めました! |
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リター被覆していない場所は土が削られていますが、 リター(落葉)を被覆してネットで止めることで、侵食から土壌を守ります。 |
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10㎝程度の高さを目安に落葉をまきました。 1年後にこれが腐植土となって土に栄養を与え、細根が増えていることを願っています! |
現在、ブナ衰退は、十分な給水ができていないことが原因であるというデータがあります。今回のリター被覆により、ブナの水分状態が改善するか、また土壌環境や土壌生物などが変化していくのか、今から2年程度モニタリングしていく予定です。うまくいくといいな!
2022・12・14 Katayama