シダの国から

豪雨が去り村内の日常が戻ってきたこの頃,演習林だけでなく事務所まわりにも多様なシダ植物が生育していることに気づきます.シダ植物は種子植物が誕生する前から分岐した植物の一派で宮崎県は国内でも特にシダ植物の多様性が高い地域です.椎葉村は谷底から九州山地の稜線まで1000m程度の標高差があり,暖温帯から冷温帯まで幅のある気候環境が多様なシダ植物相を育んでいます.近年ではシカによる林床植物の変質や消滅が深刻化していますが,シダ植物はそれほど好みでないためか,現在も多く見ることができます.以下に事務所まわりで代表的なシダを紹介します.

 イヌワラビ
日当たりの良い石垣に生えます.

 イノデ
谷沿いの湿った風通しのいいところが好きです.
イノモトソウ
石垣に生えます.
 イワガネゼンマイ
日陰や谷沿いなど湿ったところに生えます.
 イワヒバ
石垣に生えます.小葉類といって真正のシダ植物よりも昔に分岐した植物です.
 ゲジゲジシダ
羽片の基部が三角の翼状になるのですぐわかります.
 サジラン
湿った暗い崖や擁壁でよく見かけます.ランと言いますがシダ植物です.
シノブ
樹や岩に巻き付くシダで,よく縁日に苔玉にして売られていますね.
 タチシノブ
半日陰に生えます.チャセンシダ科と思っていたらイノモトソウ科でした.
トラノオシダ
石垣や法面に生えます.
ビロードシダ
樹や岩に着生するシダで細かい毛が生えています.
マメヅタ
あまりシダっぽくないシダです.茶色いのは胞子嚢の付いた胞子葉です.

2020.7.22 Nakamura